日本生物地理学会 2008年度大会シンポジウム

新たな時代の生物地理学 ― 海外学術調査の現状・成果・体験記 ―

2008年4月13日(日)12:30-14:40
立教大学7号館 7101号室(〒171-8501 東京都豊島区西池袋3-34-1)


[趣旨] (向井 貴彦)

  この数十年,生化学や分子生物学が発展することで,多くの生物学者は生命の神秘を体の内部へ求めてきた. また,現在の日本は,庶民でも簡単に海外旅行できるようになり,お茶の間のテレビにも世界中の自然が映し出されている. もはや生物学は世界を探検する必要を無くしてしまったのだろうか?

  実際には,世界はまだまだ未知を残している.18世紀から19世紀の探検博物学から始まった生物地理学は, 生物の地理的分布の詳細な記載と,その成因の考察からダーウィンやウォレスによる進化のメカニズムの理論へと到達した. 現在では,交通手段の発達のおかげで,これまで入りこむことが困難だった地域での調査が可能になり, 得られたサンプルの解析手法の進歩によって興味深い発見が続いていることから, 今後も自然観・生命観を一新するような新発見がおこなわれることもあるかもしれない.また, パラダイムの転換がおこるほどの発見は難しくとも,研究の過程で得られた知識や経験は, 海外の観光旅行ツアーやテレビの映像にはない,貴重な情報を多く含んでおり, 科学者のみならず多くの人々の好奇心を満たし,かきたててくれる.

  そこで,このシンポジウムでは海外でのフィールドワークを得意とする研究者の方々から,研究成果だけでなく, 論文では語られない経験や,その地域および研究分野の魅力を話していただくことを目的とした. 現在の生物地理学やフィールド研究の魅力を多くの方々と共有し,新たな着想や研究の発展につながれば幸いである.